LCIG治療について
当院では進行期パーキンソン病の方を対象としてLCIGの治療を開始します(商品名:デュオドーパ)。パーキンソン病が進行してくると動き難い(オフ)時間が出現してきたり、動けるけれども不随意運動(ジスキネジア)が出現したりします。このように日々の活動に支障が生じた場合に経口薬や貼付薬だけではなく、機械(デバイス)の力を借りてパーキンソン病の症状を改善させる治療をDAT(device aided therapy)といいます。
DATには①脳深部刺激療法(DBS;deep brain stimulation)と②レボドパカルビドパ経腸療法(LCIG;levodopa-carbidopa intestinal gel)があります。当院では後者②のLCIG治療の導入が可能です。前者①はドーパミン神経が働いている神経回路を調節することにより効果を現し、後者②はL-ドパを直接十二指腸内に投与することにより効果を現します。したがって、①DBSと②LCIGは本質的に異なる治療法ですが、どちらも進行期パーキンソン病の方を対象として、オフの時間を短縮して、なおかつジスキネジアを起こり難くする治療法であるといえます。
その方個人にとって、どちらの治療法がより望ましいか、あるいはDAT治療の適応はないと判断されるかは担当の医師と面談のうえ、よく話し合って決定します。パーキンソン病がある程度進行した方で症状が以下の基準に達した方が対象とされています。すなわち、レボドパ製剤を1日5回以上に分けて服用することが必要となっている方、あるいは日中のオフの時間が1~2時間を超える方、または強いジスキネジアがある方です。
この基準はどちらのDATにも適用されますが、LCIG治療はパーキンソン病のゴールドスタンダードであるL-ドパを持続的に経腸投与するものであるため、その薬物動態上の難点である消化管での吸収が不安定である点、血中半減期が短い点を克服できるところに特徴があります。
かなり有効であったとされる具体例を挙げますと、食後にオフが強く出現する方、下肢などのジスキネジアが出現する方、予測不能のオフが不意に出現する方などです。お仕事などの都合で時間を決めて服薬することが困難である方にも良いでしょう。難点としては携帯用のポンプを常に持ち運ぶことが重く感じる方がいらっしゃいます。場合によっては初期に皮膚症状やチューブのトラブルなどが生じることがありますが、対処可能です。
実際にLCIG治療を開始する場合は入院していただき、まず初めに経鼻のチューブより十二指腸内にポンプで薬剤を投与して効果を確認した後に、内視鏡的に胃ろう造設を行い、十二指腸内に薬剤投与を開始します。
LCIG治療は香川県内では当院で初めて行われます。本治療法を希望される方はかかりつけの先生に紹介状を作成してもらって受診してください。